市民の「楽しい」が社会インフラを守る! 日本発の社会貢献ゲームが描く、全員が当事者になる「インフラの民主化」

~函館市長・東電PG・経済産業省らが語る、少子高齢化時代のインフラ運用~
Growth Ring Grid Pte.Ltd.(本社:シンガポール、共同代表:鬼頭 和希、福田 史、以下「GRG」)は、持続可能な社会をめざし、ゲーミフィケーションを活用してインフラ企業が抱える課題解決の検討を進めております。
この度、アジア最大級のテクノロジーカンファレンス「WebX 2026」にて7月13日(月)に開催されたパネルディスカッション「日本の社会インフラ、次の10年──電力・通信・自治体DXの最前線」に、鬼頭が登壇いたしました。
株式会社Digital Entertainment Asset 代表取締役社長 山田氏がモデレーターを務めた本パネルディスカッションでは、北海道函館市 大泉 潤市長や東京電力パワーグリッド株式会社 代表取締役副社長執行役員 大石 峰士氏、経済産業省イノベーション政策課 フロンティア推進室 室長 吉田 修一郎氏が登壇し、市民参加型の新しいインフラ運用モデルの実現可能性について活発な議論が展開されました。
■ 日本の社会インフラを守る、電力・通信・自治体DXの最前線
本セッションでは、人口減少下で日本の社会インフラが直面する課題と、その具体的なソリューションとして注目を集める市民参加型社会貢献ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」(以下「ピクトレ」)に焦点が当てられました。
議論の中心となったのは、電力会社や地方自治体が日々向き合っている「インフラ維持の現場」です。今後の日本においてどのようなアプローチで社会を維持していくか、さらにはグローバル展開の展望まで。立場の異なるキーパーソンたちが一堂に会し、それぞれの視点から現在進行形の取り組みや今後のビジョン、そして現場で得られたリアルな知見を熱く語り合いました。
■ 深刻化する「担い手不足」と「自前主義」の限界
セッション前半ではまず、社会インフラの維持管理における深刻な担い手不足の現状が語られました。
大石氏によると、東京電力グループでは電柱600万本、電線の長さは40万kmほど(送電線も含めて)の設備を保有しており、これらをパトロールや点検しながら状態を管理し、修繕や取り替えを行っています。この点検作業を、これまでは社員や協力企業などの力で行ってきましたが、人口減少が進む中で、今後は自前主義だけでやっていくのは非常に難しいと感じていると言います。
地方自治体の現場でも同様に、職員の減少と専門職・技術職の採用難に危機感を覚えていると大泉氏は言います。
大泉氏「函館市は現在の人口が約23万人ですが、毎年4,000人減っていくような激しい人口減少の時代を迎えています。職員も10年前と比べて約8割になっており、道路や橋、学校などのインフラ整備にあたる専門職や技術職の方の採用が非常に難しくなっています。」
これに対して吉田氏は、「人口減少は日本全国で起こっている現象で、今後も続いていくという意味では、一事業者や一自治体だけでなんとかできる問題ではないとひしひしと感じています。Web3の力を使って、日本の社会インフラが抱える課題の解消につなげていければと考えています」と期待感を述べました。

■ 市民がゲームを通じてインフラを守る「ピクトレ」の仕組みと現状
こうした課題への具体的な解決策として紹介されたのが、東京電力グループであるGRGとDEAの共同開発によって誕生した市民参加型社会貢献ゲーム「ピクトレ」です。
鬼頭は、実際に電柱の維持管理業務に携わった経験から、社会インフラの維持管理をエンタメ化した「ピクトレ」という仕組みを、日本から世界に向けて発信できるのではないかと語りました。
ピクトレは、ゲームを通して電柱を撮影するとポイントがもらえる仕組みで、設備会社は撮影データを収集することで電柱の維持管理にかかるコストを削減でき、ユーザーはゲームを楽しみ報酬も得ることができます。現在アプリは約15万ダウンロード、これまでの総撮影枚数は300万枚を超えました。さらには自治体のカーブミラーなど、電柱以外のインフラ点検にも活用の幅を広げています。
昨年ピクトレのイベントを体験した大泉氏は、市民の様子を次のように振り返りました。
大泉氏「歴史的瞬間ではないかと思うくらい、たくさんの市民が笑顔で参加し、家族でパシャパシャ写真を撮っている。その小さな行動が社会課題の解決に繋がっていることに驚きましたし、本当に楽しかったです」
大石氏によると、電力会社という立場からもピクトレのメリットを感じられていると言います。電力会社としても電柱設備は一律に効率よく点検することが難しく、ピクトレを活用することで「一緒にインフラ設備を守っている」という感覚を地域住民と共有できることが非常に重要なポイントだと語りました。
これを受けて吉田氏も、Web3技術の自然な社会実装としてその価値を高く評価しました。
吉田氏「お年寄りやお孫さんは、別にこれがブロックチェーンにつながっていると思ってやっているわけではないと思います。使う側が楽しい、そして役に立つというところが今後の発展に重要であり、ピクトレはWeb3の中での好事例、トップランナーであると感じています」

■ 日本発「ピクトレ」今後の展望
ピクトレの取り組みは、日本国内にとどまらず海外展開のフェーズへと進んでいます。
鬼頭は『日本のインフラを丸ごとゲームで守る』をコンセプトに、エンタメという日本が世界に誇れる武器をグローバルに発信していきたいと語りました。
鬼頭「ピクトレは現在、タイでの展開を目指している最中ですが、構造物が古くなっている国にはどこでも適用できるソリューションですので、様々な国に種をまいていきたいと考えています」
世界を視野に入れた展開について、大泉氏、大石氏、吉田氏もそれぞれの視点から可能性を語りました。
大泉氏「函館市も『世界を函館に、函館を世界に』というスローガンを掲げています。函館という魅力も課題もあるフィールドを世界のプレイヤーに実験場として使ってもらい、何かを生み出して展開していってほしい。それがスローガンの隠れた意味なんです。今回のピクトレの取り組みはまさにそれでした」
大石氏「インフラの抱える問題は世界でも同じです。今後、日本と同じように少子高齢化の課題に直面していくことが予想される東南アジアの国々では、実績のあるソリューションが欲しいという声をよく聞きます。ピクトレは今まさに日本で実績を作っていて、今後は東南アジアにも展開し、同じように提供できるのではないかと考えています」
吉田氏「タイのバンコクに赴任していたことがありますが、タイは親日国であり、また電線がとても入り乱れている環境でもありますので、ピクトレが非常にマッチするのではないかと思います。自分の経験則上からも、十分に普及しうると考えています」
セッション中には、「バンコクと函館でのピクトレ対抗戦」といった、エンタメ性を活かしたアイデアも飛び出し、海外展開への大きな期待が示されました。

■ 今後の社会インフラとテクノロジーが描く未来
セッションの最後、各登壇者から今後の社会インフラとテクノロジーが描く未来についてメッセージが送られました。
大泉氏「ピクトレとは一人一人の写真撮影という行動の大集合体であり、これは日本人ならではの得意技、強みなのではないかと感じました。コストをかけてメカニズムで一気に解決してしまう方法もありますが、地域住民が関わっていくことはとても自分たちのプライドにつながるなと思いました。今年も北海道でピクトレが開催されるので、たくさんの住民の皆さんに参加していただき、この取り組みの意味をみんなで考えていきたいです」
吉田氏「Web3のメリットを活かし地域ごとにアレンジを加えながら、さらには『日本人らしさ』の良さを加味して、そうして海外に売っていければ、日本政府の人間として非常に嬉しい、誇らしい技術になっていくと思います。今後もそのお手伝いをしていきたいです」
大石氏「今までは良くも悪くも、電力の安定供給に責任を持つ立場から『自前主義』でやってきましたが、これからはピクトレのような形で地域の皆様と共にインフラを守り作っていく、そういう世界を目指したいと思っています」
鬼頭「『インフラの民主化』というのが私の目指す未来です。市民がエンタメを通じて街のインフラを守れる世界を本当に作れると思っています。もっと多くの方にピクトレを知ってもらえるように、これからも邁進してまいります」

■ WebXパネルディスカッション概要
・タイトル:日本の社会インフラ、次の10年 ── 電力・通信・自治体DXの最前線
・日時:2026年7月13日(月)16:20~17:00
・会場:ザ・プリンス パークタワー東京
・登壇者(順不同):
函館市長 大泉 潤 氏
東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長執行役員 大石 峰士 氏
経済産業省 イノベーション・環境局 イノベーション政策課 フロンティア推進室 室長 吉田 修一郎 氏
DEA 代表取締役社長 山田 耕三 氏
Growth Ring Grid Pte. Ltd. 共同代表 鬼頭 和希